実は受験で一番重要?レジリエンスを鍛えてストレスやプレッシャーを乗り越える秘訣!

レジリエンス

医学部受験の倍率は他学部の倍率と比較すると高く、受験生の多くはストレスやプレッシャーを感じることがあるでしょう。今回は、医学部受験においてストレスやプレッシャーを感じた時に、ストレスやプレッシャーを乗り越えていくための“レジリエンス”について公認心理師の新田猪三彦先生がお伝えしていきます。

レジリエンスとは・・・

レジリエンス(resilience)には、はね返り・弾力・回復力というような意味があり、自然科学の分野において、生態系に被害がでた時に抵抗して回復すること、「復元力」という意味合いで使われていました。その後、心理学の分野でも使われるようになり、「トラブルやストレスに直面した時に適応し対抗する力」という意味合いで使われています。
レジリエンスを「心のばね」と捉えるとレジリエンスの意味がより理解できます。ばねに負荷を与えると、ばねは元に戻ろうとします。心にも同じような働きがあります。医学部受験において、ストレスやプレッシャーを無くすことは非常に難しいと思いますし、ストレスやプレッシャーによって挫折を経験する場合もあります。大切なことはストレスやプレッシャーを無くすのではなく、ストレスやプレッシャーを感じた時に、「心のばね」を柔軟に伸び縮みさせ、ストレスやプレッシャーに対処していくことです。「心のばね」を鍛えておかないと、すぐにストレスやプレッシャーに負けてしまいます。
また、過度のストレスやプレッシャーは心のばねが伸びきって元に戻せませんが、全くストレスやプレッシャーが無い状態でも心のばねは動きません。医学部を受験するあなたも試験で友達と競い合ったら成績が伸びた、提出日ぎりぎりに宿題をやったらいつもより集中できたという経験がある人もいると思います。適度なストレスやプレッシャーは自分の力をより一層強く引き出してくれることもあります。大切なことは「心のばね」を柔軟に動かすことです。つまり、ストレスやプレッシャーを感じた時に、それに対抗できる力を鍛えることが大切です。そのための方法をいくつか紹介していきます。

 

実は医学部受験で一番重要?レジリエンスを鍛える5つの方法

運動する

ストレスやプレッシャーを感じた時に身体を動かすことも有効な方法のひとつです。
エクササイズやウォーキングなどの有酸素運動は身体の健康だけでなく、心にも作用します。
有酸素運動を行うと、脳内ホルモンのβエンドルフィンが分泌され、うつ病の症状改善にも効果があることが研究の結果わかっています。ストレスやプレッシャーを感じるとついついふさぎ込んでしまいそうになりますが、そういう時に少し身体を動かしてみることも大切です。

呼吸する

私たちはストレスやプレッシャーを感じると気づかない間に呼吸が早くなっていることがあります。また、強いストレスを感じたときには一瞬呼吸が止まります。例えば、歩いていて隣で車の事故の瞬間を目撃した時は驚いて息が一瞬止まります。
このようにストレスやプレッシャーを感じると呼吸が乱れやすいので、呼吸を整えることも大切です。ゆったりと呼吸を整え、精神が落ち着くと抗ストレスホルモンとも呼ばれるセロトニンも分泌されます。試験の時に、息を「ふぅ~」と長く吐くだけでも良いので、呼吸に意識を向けてみてください。

 

達成体験を積み重ねる

どんな小さなことでも構わないので、「できた」、「うまくいった」という体験を増やしていくことが大切です。毎日英単語を覚えたということでも構いませんし、小テストなどで良い点数を取れたということでも構いません。実際にやってみて「できた」という実体験が重要です。また「できた」という体験は100点取ったというように完璧にできたという体験である必要はありません。70%~80%くらいでも良いので「できた部分」に意識を向けるようにしましょう。そして、自分ができたことをノートや手帳にメモしておくことも大切です。受験が近づきストレスやプレッシャーを感じた時に、そのノートやメモを見返すことで自分がこれまでやってきたことを振り返ることができ、ストレスやプレッシャーを減らすことができます。

 

周囲の励ましや疑似体験

自分の力だけでストレスやプレッシャーを乗り越えることが難しい時は、周囲の人に協力してもらう方法もあります。自分自身に対して「自分はできる」、「今日は集中して勉強したなあ」、「私は難しい問題もよく解けるようになった」というように自分を褒めることで、ストレスやプレッシャーに打ち勝つ力を強くする効果はありますが、自分で自分を褒めることが難しいと感じる人もいると思います。そんな時は仲の良い友人や先生に「自分のできているところはどこですか?」、「自分がこれまで頑張ってきた部分はどこですか?」というように尋ねてみるのも良い方法です。
また、実際に医学部受験でうまくいった話や各教科の先生から医学部受験の話を聴き、自分のお手本にして真似をするのも良い方法です。医学部受験をしている疑似体験することで、どんなストレスやプレッシャーが生じるのかを事前に知ることができ、対処方法を見つけ出すことができます。
自分ひとりでストレスやプレッシャーを乗り越えようとするのではなく、周りの力を積極的に活用してみましょう。

 

感情の変化をコントロール

自分の感情をコントロールするのは難しいと感じている人もいるかもしれません。頭の中で自分の感情をコントロールするのではなく、自分の姿勢を変えてみることによって感情を変化させることができます。私たちは落ち込んだ気分の時や暗い気持ちの時は、だいたい下向きの姿勢になっています。一方で、明るい話をしている時は、視線はやや上向きになります。上をむいた状態で、気分を落ち込ませるということは難しいのです。
私たちの感情は身体の姿勢とも関係しています。ガッツボーズをする、手を上にあげて「やった!!」と言葉にするだけでも感情は変化します。試験の時に、ガッツポーズや手を上げるというのは難しいかもしれませんので、ストレスやプレッシャーを感じた時に視線を上に向けたりするだけでもストレスやプレッシャーを軽減させる効果が期待できます。
また、受験でストレスやプレッシャーを感じやすいと思っている人は、試験前に自分の気分が上がる音楽を聴く、好きな写真を見る、先生のかけてもらった言葉を思い出すなどどんな方法でも良いので、事前に自分の気持ちが変わるものを用意しておくことも大切です。頭の中で「緊張しないようにしよう」、「プレッシャーを感じないようにしよう」と思えば思うほどよけい緊張し、プレッシャーを感じてしまいます。ストレスやプレッシャーを消そうとするのではなく、他の気持ちが変わること、気分が上がることを事前に準備しておくことが大切です。

新田先生のまとめ

医学部受験でストレスやプレッシャーを感じても、それを乗り越える力“レジリエンス”(抵抗力、復元力、回復力)を鍛えていくことが大切。

レジリエンスを鍛える方法
① 運動する
② 呼吸を整える
③ 達成体験を積み重ねる
④ 周囲の励ましや疑似体験
⑤ 感情の変化をコントロール

☞新田先生の医学部受験に役立つ記事はこちら

執筆者


 

公認心理師
新田猪三彦(にったいさひこ)


2007年より心理学や脳科学の講座を行い、医歯薬専門予備校で受験に必要なメンタルの強化法、保育士会調査研究委員会において「保育士・保護者のコミュニケーション講座」、市民と協働によるまちづくり提案事業、産学官包括連携事業などを行っている。
九州朝日放送運営のマイベストプロ福岡でコラムの執筆にも携わり、一人でも多くの人が心が豊かに生活できるように情報を発信している。
また、部活動のメンタルトレーニング、学校を中退した学生の受験・学習支援、受験を見守る保護者の相談、資格試験合格のためのモチベーション管理、タイプ別による学習法のアドバイスなども行っている。

<略歴>
ふくおか成年後見センターさくら / 福岡コミュニケーションカレッジ講師 / PMD医歯薬専門予備校心理カウンセラー / 日本心理学会認定心理士 / 日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー / 文部科学省所管生涯学習開発財団(神経言語プログラミング)協会認定マスタープラクティショナー / ICA(国際コーチ協会)認定コーチ / カナダSuccess Strategies・Shelle Rose Charvet認定LABプロファイリング・プラクティショナー

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