最適な復習のタイミングは?記憶の仕方は?エビングハウスの忘却曲線を活用した学習法
学校の教師や塾の先生にはじまり、SNSやテレビからも「復習が大切」という情報が繰り返し発信されています。とは言え、復習ばかりに時間を費やしていては、膨大な知識を求められる医学部受験に必要な情報量を取り込んでいくことは難しいです。今回は、エビングハウスの忘却曲線という心理学現象を活用して、最適な学習法を考えましょう。
INDEX
エビングハウスの忘却曲線から読み取れること
エビングハウスという学者は、以下のような実験を行い、面白い結果を導きました。
実験参加者には、「wiq」「fev」「zok」といった無意味なアルファベットのつづりを、一定時間内に覚えてもらいます。この意味を持たない情報を、20分後、1時間後、1日後、1週間後に覚えなおしてもらいます。各タイミングで再度覚えなおす際にかかった時間を、最初に覚えた時間と比較して削減できた割合を「節約率」と表現しました。
すると、20分後の節約率は58%(=最初に覚えたときの42%の手間で復習ができた)であった一方で、1日後の節約率は33%(=最初に覚えたときの67%の手間で復習ができた)となりました。(図1参照)
【図1】
エビングハウスが提唱したこの心理学現象は「一度記憶したことを、一定時間経過後にもう一度記憶しなおすために必要な手間」を説明しています。医学部受験対策でいうところの「あるタイミングで行う復習での効率」、つまり復習効率を表しています。節約率が高いほど、復習効率が高くて復習に手間がかからないということです。以上より、エビングハウスの忘却曲線から読み取れることは、どのタイミングで復習すると、効率的に復習ができ、かつ情報を記憶として定着させられるかということです。
※ここで注意しておきたいのは、エビングハウスの忘却曲線が「一度記憶したことを、一定時間経過後に覚えている割合」を表しているわけではないということです。忘却曲線という名前のせいで誤解されやすいですが、あくまで「復習にかかる手間」を表現していると理解してください。
エビングハウスの忘却曲線を活用した学習法
①復習のタイミングは「1日後」まで!
20分後の節約率は58%、1日後の節約率は33%、そして1週間後の節約率は23%です。記憶の節約率(=復習の効率)を考えると、復習は早い段階で行ったほうが得策と言えます。新しいことを学習した際、復習の最も効果的なタイミングは20分以内です。しかし、20分以内に復習をするというのは現実的には難しいことも多々あります。そのため、目安として「1日以内」で復習を実施することで、効率的な記憶の定着を図ることができると理解しておきましょう。
②学習内容を、できるだけ「有意味」なものへ!
エビングハウスが行った記憶で実験参加者が覚えなければならなかったのは、無意味なつづりでした。これは、実験参加者にとって覚えても意味のない情報だったため、忘却曲線に示されるのは「丸暗記をした場合の復習効率」です。裏を返せば、覚えるべき情報を有意味なものに変換してしまえばいいのです。
丸暗記になりがちな例として、苦手科目の語句暗記があると思います。例えそのようなものであっても、できるだけ他の用語との関連付けや語呂あわせを活用することができるはずです。化学で一例を挙げてみましょう。
B 濃硝酸に入れても、Fe(手)Ni(に)Al(ある)ものが不導体 ※覚え方のイメージです
同じ情報でも、Aは丸暗記でBは語呂合わせです。Bで覚えることでエビングハウスの忘却曲線よりも効率的な記憶定着が図れます。
最後に
膨大な情報を記憶して臨まなければならない医学部受験に対して、効率的な知識を吸収する術は欠かせません。どうしても丸暗記をせざるを得ない情報は、エビングハウスの忘却曲線を理解して効率的な復習計画を立てましょう。また、丸暗記をできるだけ避ける学習を意識することで、より豊富な情報に触れる時間を確保できるはずです。今一度、自分の学習法を見直してみてはいかがでしょうか。
★まとめ
- 丸暗記の復習は「1日以内」に実施する
- 関連付けや語呂あわせを活用し、情報を有意味なものへ転換する
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