2020年最後のセンター試験講評 国語編

2020年最後のセンター試験講評 国語編

今回が最後となる大学入試センター試験は1月19日終了した。最後の大学入試センター試験は、全国689会場で18日・19日の2日間行われ、50万人以上が受験。
来年からは、思考力などをより重視した「大学入学共通テスト」に切り替わる。
今年の国語は、共通テストの新傾向を先取りしたかのような印象であった。問題を振り返り講評してゆく。

2020年センター試験 国語講評

全体の概要

センター試験最後の問題は、共通テストの新傾向を先取りしたかのような設問が見られた。特に目を引くのは漢文の、本文内容に合致するイラストを選択させるものである。センター試験は、入力・出力共に文字情報だったが、共通テストでは文字情報と非文字情報を自由に接合できるか、これを問う設問が増えるという、「予告」の意味があったのではないか。また現代文の生徒の対話を空欄補充で完成させる設問も、共通テストの実用的文章に類似したパートがあり先取りという意味があったと見ることもできる。したがって共通テストの国語に向けては、「読みつなぐ」ことがより重視されると意識して準備を進めたい。

第1問

河野哲也『境界の現象学』から出題。本文の字数は約3200字。昨年比で約1000字減った。「レジリエンス」という概念の現代的意義について論じている。
問1は漢字問題で、傍線部、選択肢ともに難度は標準的だった。
問2は傍線部の具体化内容を尋ねるもの。「レジリエンス」と「回復力やサスティナビリティ」の対比を正確に押さえているかが問われた。
問3も傍線部の具体化内容を尋ねるもの。「レジリエンス」と「脆弱性」の関連を正確に把握する必要がある。
問4も傍線部の具体化内容を尋ねるもの。「レジリエンス」という概念が「福祉」にどう応用できるかを述べた本文結部の文脈理解が問われている。
問5は空欄補充問題で、本文をめぐって議論する生徒の会話文を完成させる。「動的過程」について述べた段落群の文脈を追って解答する。
問6の表現・構成の特徴を尋ねる問題は、選択肢の判別ポイントを絞り込んでから、本文と照らして正誤を確認していく。

第2問

原民喜「翳」。昭和の戦前から終戦後を生きた青年「私」のドラマを読む。字数は約4600字で昨年並みだった。
問1は語句問題で、(ア)(イ)は辞書的意味が問われており、(ウ)はこれに加えて文脈を加味して答える必要があった。難度はいずれも標準的だった。
問2は傍線部の具体化内容を尋ねるもの。「私」の心情を押さえるが、傍線部の指示語「そうした」の確認を丁寧にやる必要がある。
問3も傍線部の具体化内容を尋ねるもの。今度は「私」が推測した妻の心情が問われている。「笑いきれないもの」が何ゆえのものかを特定する。
問4も傍線部の具体化内容を尋ねるもの。魚芳の人物像が問われている。御用聞きとしての態度を変えないあり様を押さえて答える。
問5は本文全体から「私」の感情を具体化する。選択肢が指示する参照箇所を丁寧に追い、正誤を判断していく。手間はかかるが着実にやれば得点できる設問である。
問6は表現の特徴を尋ねる問題。「適当でないもの」を選ばせることに注意。第1問の問6と同様に、選択肢の判別ポイントを絞り込んでから、本文と照らして正誤を確認していく。

第3問

中世の擬古物語『小夜衣』。本文は宮が尼上のお見舞いを口実に姫君を訪ねる場面である。字数は約1300字。昨年比で約400字減った。
問1は語意を問うもの。(ア)(イ)は重要単語、敬語の知識で解く基本的なものであるのに対し(ウ)「あはひ」がやや難しい。
問2は敬語に関するもの。敬意の対象が問われた。人物関係の整理を正確に行って解く。
問3は宮の心情「うらやましく」の具体化内容を尋ねるもの。傍線部を含む一文の前にある一文の「つれづれならず」を理解していることが正答につながる。
問4は尼上の心情に関するもの。2段前半の宰相の発言、ならびに傍線部直前の尼上の発言から判断する。
問5は女房たちの心情に関するもの。3段前半の宮の描写、ならびに傍線部直前を踏まえて解答する。
問6は本文全体の内容に関するもの。傍線部Cの後の一節がここまでどの設問でも触れられていないことがポイント。問6の正解がこれを押さえたものになっている。

第4問

六朝時代の五言詩が出題された。漢詩単独の出題は1992年度本試以来だった。
問1は漢字の読みを問うもの。難度はいずれも標準的なものである。
問2は語り点の付け方と書き下し文の組み合わせに関するもの。「同じからず、同じからざるは」という、繰り返しによる繋ぎを捉える。
問3は詩の風景に合致するイラストを選ぶという新傾向の設問。何が登場しどういう位置関係になっているかを正確に把握してから解答する。
問4は押韻に関するもの。対句を考慮して解答するのがポイント。
問5は表現に関するもの。「適当でないもの」を選ぶことに注意。詠んでいるのは実景なので、選択肢5「世俗のいとなみが」「遠いものになったこと」というように象徴として説明している点が誤り。
問6は詩人の心情把握に関するもの。友人の訪問を期待していることを理解する。語注もヒントになっているのでよく参照する必要がある。

執筆者


 

中村 智


山口大学語学文学科、九州大学文学部修士課程。大手予備校を経てPMD医学部専門予備校講師。専門は明治、大正期の近代小説。国語だけでなく小論文や自己推薦書などの指導も定評がある。

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