医学部受験生も知っておきたい〜新型コロナウイルスの基礎知識

昨今巷で話題になる新型コロナウイルスに感染( 感染症名 : COVID-19 )しているかを調べる検査について解説していきます。現在、日本は感染が収束に向かっていますが、11月からは例年、インフルエンザの流行が始まります。インフルエンザの感染者は日本では毎年年間1000万人を越え、10人に1人が感染します。そのため、多数の高熱の患者さんの中から冬季で増えることが予想される新型コロナウイルスに感染した人を探し出すことが必須になります。迅速に、正確に検査をして適切な対応を取ることが重要となりますが、それではその検査方法はどのようになっているのでしょうか。
この記事では、医学部受験に臨む受験生の皆さんも知っておくべき、新型コロナウイルスの検査方法についてご紹介します。

医学部受験生も知っておきたい〜新型コロナウイルスの基礎知識
新型コロナウイルス(COVID-19)に感染しているかを調べる検査について


国立感染症研究所で分離に成功した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真
国立感染症研究所で分離に成功した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真(提供:国立感染症研究所
新型コロナウイルスは一本鎖プラス鎖RNAウイルスに分類されます。新型コロナウイルスに感染しているかを調べる方法は、この大元であるRNAもしくはRNAを元にして作られるタンパク質を検出するというもので、下記の3つ検査方法になります。

 

PCR(polymelese chain reaction)

医学部受験にあっては、生物の問題でも出るので、基本をはきちんと押さえましょう。ここでは簡単に仕組みを説明します。まずは、鼻の奥の粘膜などから得られた検体からRNAを抽出します。PCRはDNAを増やす方法です。元の鋳型が今回はRNAになるため、初めにRNAを逆転写酵素によってcDNAを合成します。このcDNAをもとに、二本鎖DNAの解離、プライマーとのアニーリング、DNA合成の3つのステップを反応温度の変化によってコントロールし、3ステップを1サイクルとして1サイクルごとに2倍ずつDNAを増やすことができます。
熟練すれば容易ともいえますが、かなりシビアな検出方法です。より簡単なDNAからのPCRを研究室に入ったばかりの大学4年生にやらせてもうまくいかないことがままある、といったように多少の練度が必要です。実際に検査を行うのは臨床検査技師になります(コメディカルシリーズの記事をご覧ください)

参考記事医学部受験のためにも知っておこう!コメディカルシリーズ〜臨床検査技師について~

このようにそれなりに難しい検査であるため偽陽性、偽陰性が出る可能性があります。ダブルチェックとして複数回検査が必要になるのはこのためです。しかしながら検出感度は非常に高く、少しでもあればわかります。新型コロナウイルスの場合は、検体あたり3~7コピーのRNAでも検出可能です。PCRは溶液の温度を変化させる必要があり、この温度変化をさせるのにより多くの時間と特別な機器(サーマルサイクラー)が必要となります。普通のPCRではこの温度変化をさせるのに特に時間がかかるため、下記のLAMP法に比べて時間がかかります(2~3時間以上)。PCRでも時間があまりかからないものがありますが、これは細い管のなかでより早く温度を変えることで、温度変化に必要な時間を短縮しています。


 

LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)

前準備としてPCRと同じくまずはRNA抽出からcDNAを作ります。LAMPは簡単に説明しますと、4つのプライマーを用いて、DNAのループ構造を作ります。これによってDNA合成時に、二本鎖DNAの解離も同時に行わせることができるようになり、同じ温度で継続的にDNAを増やすことができます。つまりPCRに対して検査速度が早く(RNAの抽出などの前処理を含めて35~40分)、サーマルサイクラーがいらない点が利点です。長崎の大型クルーズ船(コスタ・アトランチカ)での集団感染の検査はこれに蛍光を応用した蛍光LAMP法を用いることで迅速に検査を終えることができました。ただし、検出感度については国立感染症研究所の報告ではPCRにわずかに劣る可能性が示唆されました。とはいえ限界検出感度が少なくとも1検体あたり10~20コピーほどと高い感度を持ちます。


 

抗原検査

PCRとLAMPが検体の中のRNAを調べるのに対して抗原検査はタンパク質を調べます。新型コロナウイルスを認識する抗体を用いて検査するわけですが、これはよくやるインフルエンザの検査の方法と用いる抗体が異なるだけで、仕組みは同じものになります。検体と抗体を混ぜて反応するかをチェックするだけです。検査時間は15~30分ほどと早く、簡単な操作ですむので、インフルエンザと同じくその場で結果がわかります。検出感度・精度は他の方法に比べて劣ります。具体的には検体中に100個のウイルスがいる場合はPCRに比べて精度が8割ほど、400個であれば9割ほどで陽性判定を出せます。ある程度の症状がある人は検体に1000個ほどのウイルスがいるので一定の症状がある人には有効な方法になります。
似た名称の検査に抗体検査というものがありますが、こちらは過去に感染しているかを調べるものになります。


 

以上、大枠の検査方法の解説をしましたが、重要なのはどれが一番良いのかではありません。それぞれ検査方法には利点欠点があり、これらの検査方法を組み合わせることが重要となります。熱のある救急の患者さんが運ばれた際、現在では新型コロナウイルスに感染しているかどうかわからないため、感染していても大丈夫なように安全策を取って治療を行います。その際、迅速な検査で速やかに陽性と判ればすぐに病室に移動できるなど、現場での円滑な治療に貢献することができます。検査時間の短縮は具体的に、急を要する患者、症状の重い患者、大人数が感染している可能性が高い場合(具体的にはクルーズ船、学校など)に重要となります。

 

まとめ

  • PCR検査は検出感度が非常に高いが時間がかかる
  • LAMP法は検出感度がPCRと同程度かやや劣るが検査時間が短い
  • 抗原検査は検出感度・精度が劣るが検査時間が短く、その場で結果がわかる
  • 検査時間の短縮は、急を要する患者、症状の重い患者、大人数が感染している可能性が高い場合に重要となる

 

執筆者


 

岡竜一(おかりゅういち)


愛媛県出身。
北海道大学大学院生命科学院生命科学専攻博士課程修了。理学博士(生命科学)。
北海道大学学部生時代より個別指導、予備校での個人指導、集団授業を担当。中学生から社会人(医学部学士編入)まで年齢・難易度問わず幅広く指導する。
趣味は科学全般、読書、自然観察など。

この投稿へのトラックバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL