医学部過去問の使い方―取り組み時期やメリットと注意点について―

受験勉強において志望校の過去問演習は必須の学習です。国立、私立大学問わず、学部によって出題傾向が大きく異なるため、傾向を把握し、効率の良い対策をすることが求められます。また、限られた時間の中で効率よく学習を進めていくことが、志望校合格の合否を分かつ大きなポイントとなるため、過去問の活用方法や着手する時期を予め把握しておくことは非常に重要です。本記事では、特に医学部受験を目指す受験生やその保護者の方に向け、医学部入試の傾向を踏まえた上で過去問の効果的な使い方について解説をしていきます。

 

 

 

過去問演習を始める時期は?

大学受験において過去問演習に取り掛かる時期について悩む人は多いでしょう。高3の夏から着手するという受験生もいれば、高1から解き始めるという受験生もおり、どれが正解かということについては明確な答えはありません。

過去問を効果的に使用するためには、受験科目の基礎学習が一通り済んでいることが条件となります。未学習部分があれば、正しく実力を測定することはできません。早い段階で志望大学が確定しているのであれば、カリキュラムを前倒しして、基礎学習の勉強を進めることで、過去問の着手を早めることができるでしょう。目標を早期に定めることで、優先的に学習する科目を絞ることができ、結果として早期に過去問演習に取り組めることになります。

しかし焦りは禁物です。

医学部では、理系科目が必須受験科目となるため、重点的かつ優先的に強化をしていきたい科目となりますが、医学部だから高1や高2から過去問演習に取り組まないと間に合わないというわけではなく、あくまでベースとなっているのは基礎学習です。過去問対策をするのであれば、学部問わず高3の春から少しずつ始めれば十分な時間を確保することができます。また、基礎学習が不十分なまま取り組んでも、解けない問題が多く、返って時間をロスしてしまう可能性の方が高いため、過去問演習は受験科目が確定し、基本範囲の学習を終えてから取り組みましょう。

 

 

 

医学部受験における過去問の主な活用方法とメリット

医学部において過去問は大変貴重です。

大学によっては、直近の過去問しか手に入らないケースも多いため、志望する大学の過去問が何年分確保できるか、予め把握しておきましょう。また、ネットや書店で入手できるのか、オープンキャンパス等に行かないともらえないのか等、入手方法もチェックが必要です。

過去問の主な活用メリットは2つあります。

1つ目は実力の効果測定と把握

2つ目は出題傾向の分析ができることです。

それぞれ詳しく解説していきます。

実力の測定と把握

1つ目の効果測定では、過去問を解いた時点での自分の実力を正確に把握し、合格率を判定することができます。言い換えれば、より本番に近い模擬試験として扱えるということになります。解く際は、科目及び単元ごとに自分の持っている知識、解く手順、スピードでどこまでスコアを出せるか測定するため、演習時の環境は重要です。できる限り本番に近い環境が望ましいので、時間や場所選びは工夫しましょう。解き終わったら採点を行い、知識の漏れ、弱点、解き方を振り返り、足りていない部分を漏らさず徹底的に把握していきます。記述問題や証明問題、配点が分からない部分については、予備校や高校の先生に協力してもらい、スコアを出して大問ごとに記録して保存します。

出題傾向の分析

2つ目の傾向分析では、自分の実力と照らし合わせて分析をしていくことで、より効果的な分析をすることができます。大問構成や出題される問題の難易度は大学によって異なるので、確実に取らねばならない部分や集中的に対策をしなければならない部分を明確にすることができます。傾斜配点がある場合は、それらも考慮し、残された時間でどの科目、単元を集中して扱うべきかの指針を立てると良いでしょう。ここを疎かにしてしまうと、誤った方向に努力をしかねないので、解いた時間の2倍、3倍の時間を掛けて一問一問、丁寧に行いましょう。

良質な分析をするには、ある程度の量が必要ですので、最初のうちは志望校が確定していても、なるべく多くの過去問に触れておくことが望ましいです。そうすることで、各大学による出題傾向の違いや共通点が見えてくるので、似ている大学は練習用として確保しておきましょう。2周目以降は、効果測定には使用できませんので復習用として忘れた頃に見直す目的で使用します。

 

 

過去問演習での注意点

過去問演習での注意点は、「出題傾向の把握をする」ということと「山を張る」ということは違うということです。例えば、A大学では

「例年、生物で遺伝に関する計算問題が出題される」

「大問2は毎年、代謝から出題される」等

確かに大学によって「定番」とされるような出題パターンや分野は存在します。ただ、それが自分の受験年度も同じようになるという保証はどこにもなく、例年、出題傾向の変更はありますし、過去問から出題されるということもありません。あくまで過去問は、自己分析と傾向分析を行い、学習の指針とするための教材なので、「過去問を徹底してやれば大丈夫」ということにはなりません。

また、過去問を解き過ぎることによる弊害もあります。特に、同じ大学の過去問を短期間で集中的に解くことはおすすめできません。

理由としては、いずれの大学も大問構成や出題パターンが例年同じであることが通常であるため

「次は証明だから後回しにしよう」

「ここは毎回難問だから飛ばそう」等

解いている最中に予想ができてしまい、その結果解き方に変な癖がついてしまう可能性があります。予想できるということは心にゆとりをもたらすことになりますが、裏を返すと想定外への対応にも弱くなるということです。

常に初見の状態で、基本知識をベースとした柔軟な対応こそ、本来は身に付けるべき力なので、過去問のみを中心とした学習は危険ですので注意しましょう。

 

 

まとめ

 

過去問を解き始める時期は、志望する大学が確定し、受験科目の基礎学習を終えてから。高校3年生の春スタートを目標にしつつ、カリキュラムを前倒し、可能であれば早めに着手する。

 

過去問を使用する目的は、志望大学の傾向分析と自己分析。特に医学部では、過去問の入手がしにくい大学もあるので、傾向が似ている大学の問題も含め、計画的に使用する。

 

1つの大学を短期間に集中して解き続けてしまうと、解き方や解く手順に癖が付いてしまうので要注意。あくまで過去問は分析用なので、分析をもとにした基礎学習こそ徹底する。

 

 

 

 

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