【2021大学入学共通テスト】PMD医学部専門予備校のプロ講師である吉田郭冶先生が「物理」を講評です。

【2021年共通テスト】物理の講評

共通テストの物理では、試行調査で予告されていたとおり、センター試験の出題とは異なる形式の問題が出題された。具体的には、物理現象に関する会話文を埋める問題、数値をマークするという問題である。しかし、試行調査において出題されていた、当てはまる選択肢を全て選ぶ問題や、実験の手法に関する問題は出題されなかった。

また、出題分野については、選択問題が廃止され、原子分野が必答となった。ただ、各設問の考察において後述するが、原子分野特有の公式を用いる問題ではなかった。しかし、次年度以降の受験を考えているならば、原子分野は、受験生が対策を怠りがちであるため、十分勉強を行っておく必要がある。

 

出題単元について言及すると、センター試験では頻出であった力学の円運動の単元が今回は出題されなかった。また、センター試験ではそれなりに出題が見られていた剛体の釣り合いの単元も出題がなかった。逆に、運動量保存則は今回の試験で力学、電磁気、原子分野において3回用いる場面がでてきていた。

センター試験と比べると、難易度は若干難化したといえる。その原因としては、定性的に答えを選択する問題が増えたことが考えられる。次年度以降の受験生は、計算をして答えを出す問題だけでなく、物理現象を定性的に答えられる力をつけて臨みたい。

以下では、各大問についてみていく。

小問集合で力学・電磁気・波動・熱力学から出題された。

問1 加速度運動する台車と台車上の水槽と糸に繋がれたおもりに関する問題。一定の加速度で運動している時のおもりと水面の傾きを表す図を選択する。おもりと水槽に働く力を図示せずともなんとなく感覚で正解を選べてしまった受験生は多かったかもしれない。
問2 滑車を組み合わせた装置を使って人がロープを引くことにより板が持ち上がる時の力の大きさを求める問題。一つ一つの物体に働く力を正確にかきこみ、板と床との垂直抗力が0になるという条件から正解を選ぶ。類題は多くの問題集にも掲載されている。
問3 極板間隔が異なる並行極板の中央に点電荷を置いた時に、どの場所がはたらく力が最も大きくなるのかを答える問題。静電気力の基本公式F=qEと電場と電位の関係式V=Edから答えは容易に求まる。
問4 音源が等速で運動する時に壁で反射した音との波が重なり観測者がうなりを観測する時の問題である。壁で反射する音は、壁をまず観測者として振動数を求め、それが音源となったとみなして観測者に到達する振動数を求めればよい。問題文には記載されていないが、通常、ドップラー効果の問題は音速に対して音源が移動する速度は小さいため、近似を用いることができる。近似を用いればウを解答することは容易い。ただ、近似を用いなくとも、うなりの振動数は直接到達する波と反射して届く波の振動数の差が開けば大きくなることからも答えられる。
問5 等温変化と断熱変化のp-Vグラフの関する問題と、それぞれの変化での気体の膨張の大小関係を答えさせる問題である。断熱変化のほうが等温変化よりも傾きが急な曲線になることを知識として知っている受験生は多かったかもしれない。気体の膨張の大小関係は状態方程式と断熱変化のポアソンの関係式から求まるが、これは少し難易度が高かったかもしれない。

 

第2問について

第2問Aはコンデンサと抵抗と直流電源からなる回路に関する問題。Bは磁場中を導体棒が運動する時に生じる電流や力に関する問題である。

 

Aについて

スイッチを閉じた直後のコンデンサは、閉じる前に電荷が溜まっていなければ、導線とみなせる。また、スイッチを閉じて十分時間が立ち、コンデンサの充電が完了した後は、コンデンサの両極板に流れ込む電流は0である。つまり断線状態とみなせる。このような性質を用いて考える問題が問1と問2であった。問3はホイートストンブリッジの平衡条件を用いる問題で、全体的な難易度は高くないといえる。

 

Bについて

磁場中を運動する導体棒には、導体棒を構成する自由電子にローレンツ力が働き、導体棒中を移動する電子はこの力により仕事を得る状況が実現する。この仕事が得られたことを誘導起電力が発生した、といい、その誘導起電力の大きさはファラデーの電磁誘導の法則やvBl公式によって求められる。

導体棒が磁場中を動く場合にはvBl公式を用いて導出したほうが早く導出できることが多い。単位面積あたりの抵抗値がrであらわされているので、導体棒1つあたりの抵抗値はrdで表されることに注意する。流れる電流の向きや導体棒に電流が流れることにより生じる力の向きについては、フレミングの左手の法則で判断できる。

問6に関しては、導体棒間に発生する力は内力であることから、運動量保存を用いて初期状態と最終状態をつなぐ。ただ、これを立式できなかったとしても、①と②はこれまでの問題が正答しているならば、違うと判断できる。

 

 

第3問について

第3問Aはダイヤモンドが明るく輝く現象を何故か考察する問題。第3問Bは蛍光灯が光る原理について考える問題である。

 

Aについて

光がある媒質中に入射した際の波長と振動数の関係、屈折の法則、全反射の条件などを問われている。振動数は変化せず、波長は屈折率で割った値がその媒質中での波長となることは知識として知っておきたい。また、短い波長の光ほどよく曲がることも常識にしておきたい。

問3は問1,問2が解けていれば与えられているグラフを見て判断することができる。

 

Bについて

原子分野の出題である。しかし、問4はエネルギーと仕事の関係(もしくは力学的エネルギー保存)を用いる電磁気の問題といえる。これは正答率は高かったと思われる。

問5,問6は電子が水銀原子に衝突した際の運動量の和と運動エネルギーの和の増減に関する問題である。原子分野においても、内力のみ働いている状況であるならば。運動量の和は保存されることは知っておきたい。

一方運動エネルギーの和は、過程(b)では水銀原子が励起状態になることから、減少することに注意したい。

 

 

第4問について

第4問はボールを投げた際のエネルギー保存に関する問題である。後半ではAさんとBさんの会話文を補充する問題が出題された。

前半では力学的エネルギー保存や運動量保存を用いて答えを導出する。私立大学や国立2次試験対策を行ってきた受験生なら問題なく解けるレベルであった。

最後の問4では、摩擦が無視できるときの現象について考察する問題である。落ち着いて考えれば正解を選ぶことは難しくないが、最後の問題であるため、時間に追われて間違いを選択してしまった受験生も少なくないと考えられる。

 

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