2020年度福岡大学医学部入試化学の傾向解説
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YouTube福岡大学医学部問題解説
福岡大学医学部化学の問題をPMD長崎校伊藤先生が解説
概要
・大問は3問
・解答時間は理科2科目で120分
・最新の用語に注意したい。
設問別分析
大問1(小問集合)
2020年度は無機の問題がなく理論と有機のみの出題だった。福岡大学の大問1は例年、総合的な小問集合でかなり簡単な問題となっている。問3に関しては問題の指示を見落とすケアレスミスに気を付けたい。どれも落としたくない問題となっている。
大問2(金属イオンの沈殿)
水溶液に含まれた金属イオンを実験から定性していく問題で解答に至るまでの情報が十分用意されており、[CuCl4]2-に関する知識がなくとも完答したい。このように知らないことが出てきても前に進められるように問題演習は可能な限り取り組みたい。問題自体は比較的簡単である。
大問3(二酸化窒素と四酸化窒素の化学平衡)
典型的な問題だが、誘導にきちんと乗れるかどうか、また解く速度で差が出る。よくある問題なので問2の(お)までは止まらないで埋めていきたい。逆に言えば問2の(お)は後ろの問題に関わる重要なところになるので、ここまで解けない場合は十分に対策を取る必要がある。また、この大問3が解けた人でも、この問題は人によって解くスピードが大きく変わるので、できるだけ早く解けるように考えの整理をしておく必要はある。
大問4(糖類)
用語とスクロースの構造は解答できないといけない。アミロペクチンの分岐の問題も割と典型な問題に当たるので、できれば解けたい。
用語について、アルデヒド基がないが、高校の教科書は基本的にアルデヒド基と書かれホルミル基が併記されている。これは日本化学会が2015年に提言した改案もあったことを反映していると考えられる。これによるとアルデヒド基は使わないでホルミル基を使うのがよいとされている。これはIUPAC命名法がホルミル基としており、そこと合わせるためである。
傾向と対策
例年大問は4題。選択式と物質名、化学反応式、化学式を書かせる記述式が併用されている。例年理論と有機分野が中心で、無機に関しては融合問題として出る程度で問題は少ない。特に金属イオンの分離に関する知識を中心に問われている。年度によっては多少細かい知識が要求されているため、日ごろから教科書の備考など細かい点を確認しておくと良い。典型的な計算問題もよく出題され、時間的に比較的差が出やすい問題となっている。鉛蓄電池の濃度計算のように、典型だが時間のかかりやすい問題は差が出やすいため、勉強をする際は特に、問題を解く時間に気を付けた学習をしたい。
大学共通入学試験とは違った二次試験的な問題の中でも標準的な問題が多く出題されている。2020年度でいえば大問3に当たり、福岡大学の難しめの問題はこのような典型問題に当たるため、『化学重要問題集』(数研出版)に入る前の問題集、例えば『化学基礎問題精講』(旺文社)当たりのレベルの問題集を徹底的にやる期間を設けることで高得点を狙うことができる。
他に気を付けることとしては、理論無機の融合問題に少し多めに演習をしておくと本番でも焦りにくくなるだろう。
大問4で解説した日本化学会の提言についてホルミル基以外の重要そうなところを以下に解説する。単語の知識として知っておきたい。
化学反応は、十分な活性化エネルギーを得て遷移状態(反応物から生成物へ「移(遷)れる状態」に達する)
用語としてわかりやすいがこの区別は英語圏の教科書にはみあられないので統一するように提案されている。このことを反映して問題文で⊿Tbとして書くようにしている問題が見受けられるようになっている。
以上福岡大学は上記のようなことを意識しているので少し用語の理解を深めていると入試当日で混乱することはないだろう。
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