2020年最後のセンター試験講評 数学Ⅰ・A数学Ⅱ・B編

2020年最後のセンター試験講評 数学Ⅰ・A数学Ⅱ・B編

今回が最後となる大学入試センター試験は19日終了した。最後の大学入試センター試験は、全国689会場で18日・19日の2日間行われ、50万人以上が受験。
来年からは、思考力などをより重視した「大学入学共通テスト」に切り替わる。
今年の数学には、最近に見られない出題形式が複数あり、昨年度よりやや難化した。問題を振り返り講評してゆく。

2020年センター試験 数学Ⅰ・A講評

全体の概要

最近には見られない出題形式が複数あった。問題量は昨年と同量だがこれらは注意深く考えなければならないという理由などから、昨年度よりやや難化した。

第1問

〔1〕は直線の方程式から不等式に結びつける問題である。注意して計算を進めることになるが、分母にaが含まれている形を処理することが鍵となる。
〔2〕は、集合に関する記号を正しく把握しているかを問うものも出題された。
〔3〕は2次関数の平行移動が主なテーマとして出題された。また、放物線が線分と共有点をもつ条件を求めるという問いも出題された。これは数式で処理するか図形的に考えるか複数の方法がある。珍しい出題であり、難しいだろう。

第2問

〔1〕は正弦定理、余弦定理といった公式を利用すれば正しい値を導ける。ただ、途中でAC/ADという辺の長さの比を問う問いがあり、これは数学Aで扱う角の二等分線の性質を利用することもできる。
〔2〕では、最初の問いで99個の観測値からなるデータについて、どのようなものでも成り立つものを選択するという一般的な理解を問うものが出題された。それ以降の設問では例年通り図表の読み取りがテーマである。また、散布図に補助線が引かれており、それを利用する問いも出題された。

第3問

前半については、複数の試行について、述べている文章が正しいかどうかを確認していかなければならないため、少し時間を要するだろう。後半では、コインを最大5回投げるときの得点について確率を計算する問題である。途中で得点が0点になったら試行をやめるというルールがあるため、公式にどおりではないので、そういう意味で難しいだろう。

第4問

近年の出題テーマとは異なり、循環小数とそれに結びつく約数・倍数が主なテーマとして出題された。誘導がやや丁寧であるため、それに従って解いていけばよい。ただし、最後の問いではaとbが異なる整数であるという条件があるため、注意深く考えなければならない。

第5問

基本的にメネラウスの定理や方べきの定理を利用することで正しい値を導ける。しかし、最後の問いは円に内接する四角形についての本格的なものであるから、応用力がないと難しいだろう。

2020年センター試験 数学Ⅱ・B講評

全体の概要

昨年よりは微かに難しめ。前半の数学Ⅱの部分は取り組みやすい。それと比較して、後半の数学Bの部分は若干手間がかかる。ベクトルの後半はやや難しめといえるだろう。

第1問

〔1〕は三角関数の不等式の解、2次方程式の解に関する問題である。(1)は不等式を解く非常に基本的な問題。(2)ではkの値を求めるのに意外に難しい。選択肢を選ぶ問題では、図を描くと間違いにくい。
〔2〕は指数・対数関数の問題で(2)は整数が登場するところがやや珍しい。(1)はかなり基本的だが、最後の空欄では、因数分解に気づくかがポイント。領域が登場する点がやや特徴的である。

第2問

2つの放物線と共通接線によって囲まれた面積というおなじみの題材である。(1)は共通接線を求める設問。接線を求める際に2つの式を比較する手法も、手慣れている受験生が多いだろう。(2)も基本的である。積分計算もかなり楽である。(3)では場合分けを行うが、特に手の止まる要素はない。(4)最大値も微分を行えば、因数分解は簡単である。

第3問

数列の一般項を求める問題で若干面倒である。部分分数分解や等比数列の和を用いるだけなのだが焦ると計算ミスを誘発しやすい問題である。設問では初項に関する記述があるが、第2項目でも検算すると良い。(4)では実際には、数列の各項の値を考えて、解答した者が多かっただろう。整数問題的要素が見られるあたりが特徴的である。

第4問

(1)~(2)までは基本的事項の確認。(3)も難しくないのだが、正方形や長方形になるわけではなく戸惑うかもしれない。(4)は後半で(4)の前半をどののように活用するかがポイントである。全体的に、センター試験の空間ベクトルとしては比較的難易度は高めであると思われる。

第5問

(1)は確率の平均(期待値)と標準偏差を定義に基づいて計算する問題であった。(2)は、前半は二項分布の正規分布による近似、後半は母比率が変化したときの平均、標準偏差の変化を考察する問題である。(3)は母平均を信頼度95%で求める問題であり、過去何度も出題された形式であるが、mではなく、tの信頼区間を求めるため、少し難しいかもしれない。

執筆者


 

理数科目専門塾・夢現ゼミ
溝渕 浩


立命館大学理工学部数学科岡山大学大学院理学研究科卒業
英才教育研究所にて副所長を務める。その後宮崎第一高校数学科主任、立命館守山高校を経て地元都城にて「理数科目専門塾・夢現ゼミ」を設立。PMDネット医学部家庭教師で宮崎地区を担当している。現在に至るまで東京大学理科Ⅰ類(のち理科Ⅲ類転部)ほか医学部合格実績多数。

理数科目専門塾・夢現ゼミ
宮崎県都城市北原町30-6、0986-23-1370

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