精神医学と心理学って違うの?

 

いずれも人間の心について専門に扱う精神医学と心理学ですが、その違いを明確に理解している受験生はそう多くはないと思います。精神医学と心理学の違いとは?精神科医と心理士の違いとは?そもそも、精神医学と心理学では何を学ぶの?深く考えれば考えるほど難しくなる二つの学問の違いを、いくつかの視点で整理して理解を深めましょう。

名前から考える精神医学と心理学

いずれも心の状態を扱う学問ながら「精神」「心理」と異なる名称を使っています。それぞれの意味を広辞苑で調べると、次のように記載があります。

  • ■精神:知性的・理性的な、能動的・目的意識的な心の働き。
  • ■心理;心の働き。行動によってとらえられる心的過程をも指す。

精神の説明に「理性的な」とあるように、理性を持った人間の心を指し示すことが分かります。一方で、心理はより大きな心の働きを指しているようです。動物心理という言葉があるように、動物全般の心の働きについて扱えるのが心理学と言えるでしょう。
日常で使う言葉を思い出してみても、「あの人は精神力がある」とは言いますが「あの猫の精神はすごい」というふうには言いませんよね。逆に「ご主人に寄り添う犬の心理状態」についてはテレビなどでもよく取り上げられていますね。


職業から考える精神医学と心理学

続いては、二つの学問を職業から考えてみます。精神医学を学んだ精神科医と、心理学を学んだ心理士。それぞれの学問を根拠に治療を行う職業です。ただし、医療行為を行えるかどうかという点に、両者の最大の違いがあります。
心に問題を抱えた人が受ける「カウンセリング」とは、心理士、いわばカウンセラーが提供します。カウンセリングでは、心理療法を根拠に相談者(クライエント)の心の状態を把握したり、適切な認知へ導いたりします。しかし、カウンセリングの中で「医療行為」を行うことは禁止されています。
この医療行為とは、病気の診断や薬の処方です。ですので、心理士がカウンセリングで「あなたは●●という病気ですね。」と伝えることはできません。このような医療行為は、国家資格である医師免許を持った精神科医にしか許されていません。
以上のように、心理士とは異なり精神科医は精神医学をベースに医療行為を行うことができます。つまり精神医学は、心の動きをただ理解するだけの学問ではありません。うつ病などの精神疾患を診断したり治療したりするために必要な知識を学ぶ学問と言えるでしょう。


学問から考える精神医学と心理学

学問としての捉え方はさまざまですが、学問内容をイメージしていきます。
心理学を学ぶイメージは、人間の記憶や表情、体の反応のデータをとり、その変化や割合を調査することで心の動きを理解するというものです。例えば、笑顔のときと無表情のときとの心のポジティブさの違いは、時間経過とともにどう推移していくかを調べ、心の動きの法則を考えるのが心理学です。
一方で、精神医学では出現している症状が薬物治療によってどのように変化するのか、またその疾患がどのような構造なのかを考えます。うつ病の際の心理状態を研究したり、うつ病の治療法の効果を調べたりするという部分が、精神医学の担う領域です。


最後に

今回は三つの視点から精神医学と心理学の違いを整理しました。医学の一部である精神医学一つを例に出しても、他の学問との類似点や相違点はこれほどまでに多くあります。医学部受験を志す段階で、さまざまな学問との比較をしてみることが、医学部に対するより深い理解につながることになるでしょう。

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