医学部の留年事情
医学部の留年事情
燃え尽き症候群という言葉を耳にしたことがありますか?
以前は社会問題として取り上げられたこともあり、例えば受験勉強に気力、体力を使い果たし、入学後にやる気が湧いてこない状態のことです。症状としては、無気力・脱力感・閉塞感などが挙げられます。
受験勉強に一生懸命取り組むことは確かに大切ですが、合格後、入学後のイメージを持てていないと燃え尽き症候群になるリスクがあります。努力を重ねてせっかく医学部合格を果たしたのに、やる気を失ってしまうと医師になることが難しくなります。医学部受験情報を見て受験校を決める際に、入学後のキャンパスライフもイメージしておいてください。更には、各大学のウェブサイトにある、受験生に向けた先生方からのメッセージを読んでみてください。また、医学部合格はあくまでも通過点であり、医学部でも勉学に励むことで医師になる流れを常に意識しておくと良いでしょう。
医学部を目指す以上、医師になりたい気持ちが強い受験生が多いので燃え尽き症候群は起きにくいだろう、と考えるかもしれません。しかし実際には、医学部に入学したものの、留年してしまいスムーズに医者に慣れない人が散見されます。他人事ではなく、自分も気を付けないと燃え尽き症候群になりかねないと考えておいてください。
また、無事医学部を卒業して研修医になれたとしても、研修医としてバーンアウトしてしまう例もあり、医師になるというイメージを強く持ち続けながら勉強や研修に励むということの難しさを表しています。
大学毎に大きく違う医学部留年
医学部生が燃え尽き症候群になるケースがどのくらいあるのかは、医学部受験情報から推測できます。ここでは、文部科学省が出している、令和元年度の大学毎の6年間卒業率を見てみましょう。
令和元年度 医学部医学科入学状況
3ページ目と4ページ目に国公立大学医学部と私立医学部の卒業率が掲載されています。
これを見ると、医学部ごとに6年間卒業率が違うことがわかります。割合が低い大学では、留年者が多く出たことを意味します。
大学別の数値をより具体的に見てみましょう。まず、東京大学医学部は、101人入学した全員が一人も留年することなく卒業しています。東大医学部(主に理科三類で入学)に入るハードルは極めて高いですが、燃え尽き症候群にならずに全員がストレートで卒業できたことになります。
いっぽう、6年間卒業率が7割前後と低めの大学もあります。これは入学者の意識にも原因があるかもしれませんが、大学のカリキュラムによる影響も考えられます。医学部入学後も高いモチベーションを維持したい場合は、医学部受験情報を見て、良医を育てるためのカリキュラムがどう設定されているかなどを、大学ごとにチェックしてみてください。
また、同じ表から大学の学生教育に対する姿勢もうかがえます。医学部の評価には、国家試験の合格率が影響します。この合格率を高く見せるために、志願者のうち合格可能性が低そうな学生を受けさせない対応をとっている大学があるようです。体調不良などで当日に受けられない学生もいるでしょうが、出願者数と受験者数に大きな乖離が見られる場合は要注意と言えるでしょう。
教育に対する姿勢がうかがえる大学の1つとして、帝京大学医学部を挙げておきます。帝京大学医学部では、第113回医師国家試験において、出願者124名に対して受験者124名となっており、全員が受験しています。合格率も83.1%と決して高い方ではありませんが、学生の受験意欲を尊重しているのではないでしょうか。いっぽう、同じ表からは、帝京大学医学部の留年率の高さもうかがえます。いい加減な教育のまま卒業させるのではなく、しっかりと深く医学を学ぶ機会を与えていると言う解釈もできます。(参考URL:合格体験記|帝京大学)
医学部合格を果たしたのちは、極力留年を避けてスムーズに医師国家試験を目指したいところです。ただし、優れた医師として活躍できるよう、在学中に丁寧に医学を学ぶ上では、安易に進級させる医学部は好ましくありません。医学部受験情報を確認して、各大学が学生教育にどのような姿勢で臨んでいるのかを比べてみてください。
最後に実際に燃え尽き症候群になってしまったり留年してしまった人にむけてですが、決して悲観的になりすぎないようにして下さい。医学部はその膨大なカリキュラム上、ちょっとした注意不足やみんなとは違うところを勉強しすぎたということだけで簡単に留年してしまうことがあります。留年した一年で今まで出来なかった新しいことに取り組んでみたり、基礎からもう一度徹底的に勉強しなおしてみたり、いろいろなことが出来ます。来年こそは進級できるようにぜひ頑張ってみて下さい。
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