医学部受験に必要な「緊張」を身につけよう!

医学部小論文・面接対策

みなさんの努力の集大成となる医学部入試は、誰もが少なからず緊張を感じながら挑むものです。とは言え、緊張しすぎることで実力を発揮することができず、後悔が残るのは避けたいところです。高いレベルの実力を求められる医学部受験では、より一層実力を発揮する方法を知っておく必要があります。今回は医学部受験を直前に控えた受験生の緊張にうまく対処するための意識・行動の情報を、日本心理学会認定心理士山崎先生がご紹介します。

1.「緊張している自分」を受け入れる

恋人とのデートや部活動の大会などで「緊張するな!」と自分に言い聞かせ、逆に緊張が高まってしまった経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。これは精神交互作用と言われる心理学的な現象です。「緊張するな!」と唱えることで、緊張に対する注意が集中し、感覚が鋭敏になって緊張をより感じやすくなってしまうという現象です。つまり、緊張をしないように意識しすぎることで、ますます緊張を感じやすくなってしまうわけですね。この現象を簡単に実感するために、次の実験を試してみましょう。

問:次の指示に従ってください。
①「黒色の動物をイメージしないようにしてください」
②「自分の好きな食べ物のことを考えないようにしてください」
③「天井を見続けて、白色の部分だけを見ないようにしてください」

…いかがでしょうか?「黒色の動物って…」「好きな食べ物は…」「白色の部分は…」と、注意をそらすべき対象について、最初に連想してしまっていませんか?同じように、「緊張しないようにする」と考えれば、最初に「緊張」を連想してしまうのです。
ですから、緊張をしないように意識するのではなく「緊張してもいいんだ」「いま、緊張しているな」と考えてみてください。みなさんも、医学部入試問題の出題者も同じ人間です。全員が緊張して当たり前なんです。その当たり前を受け入れることで、自分の心理状態を客観視できるようになり、緊張をコントロールする第一歩となります。

2.緊張に対応するルーティンワークを決める

「緊張している自分」を受け入れることができれば、残るはその緊張を和らげる手法のみです。ここでお手本にしたいのは、大舞台で活躍し続けているプロアスリート選手です。

日本だけでなく、アメリカのメジャーリーグで大成功したイチロー選手は、相手投手と対峙するときにバットを握った手を投手側に伸ばし、バット越しに投手を見るというルーティンワークを欠かさずに行います。このルーティンワークを行うことで、集中力を高めて打席で結果を残しやすくしているのです。

イチロー選手のようなプロアスリート選手が進んで取り入れているルーティンワークは、「古典的条件付け」という心理現象を軸とした緊張緩和の手法です。ある場面において同じ動作(=ルーティンワーク)を行うことで集中力を高めることができるようになり、緊張が和らぎます。最初は効果の薄いルーティンワークですが、何度も繰り返す行うことで、「ルーティンワークを行う」という刺激が「集中する」「緊張が柔らぐ」という反応をもたらすという関連付けが行われます。これを「条件付け」と呼びます。

胸に手をあてて深呼吸する、手のひらを見つめる、10回頷く…簡単なものでもいいので、集中力を高め、緊張を和らげるための自分なりのルーティンワークを設定しましょう。そして、それを試験当日まで継続してください。入試直前期において、英単語や公式を新たに勉強し始めるよりも何十倍、何百倍と良い結果をもたらします。

最後に

ヤーキーズ・ドットソンの法則に基づけば、人は全く緊張感のない状態よりも、適度に緊張することで高いパフォーマンスを発揮できます。社会人で例えると、働きぶりにかかわらず給料が一律であるよりも、成果に応じて給料額が変わる制度のほうが成果を出しやすいという状態です。医学部受験でも、自信がありあまって緊張していないより、適度に緊張しながら試験に臨むほうが成果を出しやすいと言えます。

繰り返しになりますが、緊張することは決して悪いことではありません。緊張との上手な付き合い方を知って、医学部受験の直前期を過ごしましょう。

執筆者


 

山崎 敬太


保有資格は日本心理学会認定心理士、メンタルヘルス・マネジメント検定試験Ⅱ種。
筑波大学人間学群心理学類を卒業後、高校英語講師として難関大・医学部志望者300名以上の受験指導をおこなう。
2017年より小中高生へ早期キャリア教育事業の施設長として、進学や就職を控えた児童や生徒ご家族へ相談援助をおこなう。

 

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