【2020年度】福岡大学医学部入試傾向の解説<生物編>

概要

  • 大問は5問
  • 理科2科目で120分
  • ボーダーはおおむね8割
  • 計算問題はあるが論述問題はない

設問別分析表

大問1(筋収縮)

筋原繊維の滑り説についての問題である。基本的な用語を問うものもあるが,問4のトロポニンのような新しい用語も問われている。アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込むことで収縮が起こるということだけでなく,ミオシンフィラメントがアクチンフィラメントをたぐり寄せる仕組みやトロポミオシンのはたらきなど最新の教科書にしか載っていないような新しい内容を押さえておく必要がある。
 

大問2(発酵・呼吸)

飲酒したときの肝臓でのアルコールの代謝を題材にしているが,実は発酵と呼吸について問うている問題であることを見抜けるかが鍵。問2と問4に計算問題が出されている。問2は問題集などでも時々見られる四量体についての問いであるが,条件を正確に読み取った上で丁寧な計算が求められる。問4は電子伝達系で産生されるATPだけでなく,クエン酸回路で産生されるものも加えなければならず,呼吸についての正確な知識と正確な問題文の読み取りが必要である。問5も発酵についての深い理解が問われている。
 

大問3(ホルモン・遺伝子発現の調節)

ホルモンの水溶性と脂溶性によるはたらき方の違いと遺伝子発現についての問題。近年の入試問題でよく出題されている。問3のGタンパク質など,教科書によっては扱っていない用語も問われている。後半は実験考察問題であるが,文章が長く多くの要素が絡んだ実験で,データから読み取れることを整理するのが難しい。「ホルモン」「受容体」「DNA」などがどのような関係になっているのか,しっかりと整理しながら読んでいく必要がある。問8を正解するには,相当の読解力と考察力が必要である。
 

大問5(進化と系統)

単純な知識を問うている問題で,時間もかからず高得点が望める。ただし問2は正確な数値を覚えている必要があり,問4は教科書外の知識が必要である。
 

大問4(視覚)

基本的な知識と簡単な計算問題である。全問正解したい。

傾向と対策

近年になって教科書に載るようになった最新の内容を問う問題が散見される。これは他の大学でも見られる傾向だが福岡大学も例外ではない。最新の教科書や参考書に載っている知識も身に着ける必要がある。大問による難易度の差が大きいので,難しい問題は後回しにして最後の問題まで手を付け,取れるところを確実にとっていきたい。高度な読解力や計算力が求められる問題や細かい知識を求められる問題もあるが,ボーダーがおおむね8割であることを考えると,これらの問題にどこまで対応できるかが合格の鍵になる。

執筆者


 

福井 慎吾

鳥取県出身。

九州大学医学系研究科分子生命科学系専攻博士後期課程。

私立青雲高校教諭を経てPMD医学部専門予備校生物講師。学生時代は落語研究会に所属しており現在まで活動を続けている。芸歴28年。講座名は六笑亭福太郎。

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