医学部入試までのモチベーションを保つために〜なぜ秋になると勉強の意欲が下がるのか

夏休みにこれまでの復習や自分の弱点分野の強化などを行い勉強はしてきたものの、実力がついたのかあまり実感できないという受験生や模試の結果があまり良くないという受験生もいるのではないでしょうか。

頑張っているもにもかかわらず結果がでないというのは、とても辛いことです。特に秋はこのような状況に陥りやすいやすくモチベーションが下がる傾向にあります。

このような時期をどのように過ごせば良いのでしょうか。また受験生を見守る保護者はどんなことに気をつければよいのでしょうか。

 

医学部入試までのモチベーションを保つために〜なぜ秋になると勉強の意欲が下がるのか

 

夏休みの医学部入試へ向けての勉強の成果はすぐにはでない

 

夏休みの医学部入試へ向けて勉強を頑張った結果がすぐにでれば良いのですが、すぐに結果が見えるものではありません。実力の伸びを実感できるには最低でも2〜3ヶ月はかかります。勉強してきた成果は、勉強した量に合わせて、成績が上がるというような一次関数でなく、それほど成績が上がらない時期が続き、ある時期を経てから成績が急激に上昇する二次関数のような形になります。結果がでるのを待ち続けるのは苦しいことだと思います。

受験生はそれほど成績が上がらない時期に、「今、勉強していることに意味があるのかな」、「この先、本当に結果がでるのだろうか、無駄な努力に終わるんじゃないか」、「勉強しても目標に届かず、どうせダメなんじゃないかな」などと考えてしまい、勉強になかなか集中できず、夏の疲れなどで体調を崩し勉強が進まないという状況に陥ることがあります。このような状況が続くと、だんだんとモチベーションが維持できなくなり、秋になって勉強の意欲が下がってしまいます。

では、このような時期を乗り越えるにはどうすれば良いのでしょうか。

 

 

グリット(やり抜く力身につける

 

ペンシルバニア大学アンジェラ・ダックワース教授は、著書

『やり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける―』

の中で、人生で何を成し遂げられるかは「生まれ持った才能」ではなく、「情熱」と「粘り強さ」によって決まる可能性が高いと述べています。

ダックワース教授は「やり抜く力」を短期的な期間と捉えるのではなく「人生」というより広い視点で何を成し遂げたいのか考えることが重要だと述べています。受験勉強で考えると、短期的な受験勉強において「最後まで勉強をやりきる」と捉えるのではなく、「自分はどんな医師になりたいのか」を考え、それを成し遂げるためのひとつのプロセスとして、今、勉強をしていると捉えることです。今、自分自身が何のため勉強をしているのかをもう一度再確認することが、モチベーションを下げないひとつの方法です。

モチベーションが落ちているなと感じた時は、もう一度、どんな医師になりたいのか、どんな大学生活を送りたいのかをイメージしてみましょう。

 

 

気が散るもの、勉強の妨げになるものを排除する

 

モチベーションが下がると意識が他のもの向かいやすくなります。ついスマホを見たらあっという間に時間が過ぎていたという受験生も多いものはないでしょうか。

調べものに便利だからとスマホを机に置いている受験生もいるかもしれませんが、スマホがあるとSNSが気になったり、ゲームしたくなったりついつい他のことをやってしまいがちです。また漫画やゲーム機器を机に置いていると意識がそちらに向いてしまうことがあるでしょう。

勉強する時間が減り、成績が伸びずに、さらにモチベーションが下がるという負のスパイラルに陥ります。

できるだけ机の上には勉強に必要がないものは置かないようにしましょう。そして、とりあえずノートを開く、とりあえず鉛筆を持つというように何らかの行動をしましょう。

家にいると他のことに意識を取られやすくなるので、学校や予備校の自習室を使うなど、勉強の妨げになるものが少ない環境で勉強しましょう。

 

 

受験生を見守る保護者が気をつけておきたいこと

 

秋になり、受験生のモチベーションが下がってくると受験生からいくつかのサインがでてきます。

例えば、生活習慣が乱れてくる、朝起きる時間が遅くなる、寝る時間が遅くなる、勉強以外のことに興味を示す、食欲がなくなる、体調を崩すなどの変化が受験生にでてきます。

そのようなサインがでてきたときは、心理的な不安を抱えていると考え、受験生の不安に耳を傾け、話を聴くように心がけてください。

直接、お子さんの話を聴くことが難しいと感じる場合は、受験に詳しい先生やカウンセラーなど専門家に相談してみるのも良い方法です。

ちょっとした変化でも早めに見つけることで、モチベーションが下がっていく状況を回避することができます。

 

まとめ

①夏休みが終わり、秋になり受験が近づくと心理的な不安やプレッシャーによって、モチベーションが下がることがある。グリット(やり抜く力)を持つために、どんな医師になりたいのか、将来どんなことをしたいのか未来の目標を描くことが大切。

②スマホなど気が散るものは勉強以外のことに意識を向けてしまうので、スマホなどは机に置かず、学校や予備校などの勉強できる環境が整っている自習室を活用しましょう。

③保護者の方は生活習慣の乱れや体調の変化などがお子さんにあれば、お子さんの話に耳を傾けることも大切です。

 

 

参考文献

アンジェラ・ダックワース(著) 神崎朗子(翻訳)

やり抜く力 GRIT(グリット)―人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける―ダイヤモンド社 2016

 

キャロライン・アダムス・ミラー(著) 宇野カオリ(監修) 藤原弘美(翻訳)

実践版GRIT(グリット) やり抜く力を手に入れる すばる舎 2018

キャロル・S・ドゥエック(著)今西康子(翻訳)

マインドセット「やればできるの研究」 草思社 2016

 

執筆者

 

日本心理学会・公認心理師
新田猪三彦(にったいさひこ)

2007年より心理学や脳科学の講座を行い、医歯薬専門予備校で受験に必要なメンタルの強化法、保育士会調査研究委員会において「保育士・保護者のコミュニケーション講座」、市民と協働によるまちづくり提案事業、産学官包括連携事業などを行っている。
九州朝日放送運営のマイベストプロ福岡でコラムの執筆にも携わり、一人でも多くの人が心が豊かに生活できるように情報を発信している。
また、部活動のメンタルトレーニング、学校を中退した学生の受験・学習支援、受験を見守る保護者の相談、資格試験合格のためのモチベーション管理、タイプ別による学習法のアドバイスなども行っている。

<略歴>
ふくおか成年後見センターさくら / 福岡コミュニケーションカレッジ講師 / PMD医歯薬専門予備校心理カウンセラー / 日本心理学会公認心理師 / 日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー / 文部科学省所管生涯学習開発財団(神経言語プログラミング)協会認定マスタープラクティショナー / ICA(国際コーチ協会)認定コーチ / カナダSuccess Strategies・Shelle Rose Charvet認定LABプロファイリング・プラクティショナー

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